*** 奏法技術について *** 望月 麻里 ---------------------------------------------------------------- 私がいつも叩いている、このファイバースキン製のHanddrumは、 遠くの山まで聴こえるような音は出ないけれど、 桜色、空色、うぐいす色のような淡い色を出せたり、 もちろん人の繊細な感情も 叩き方によってかなり幅広く表現出来る 珍しい太鼓です。 ●叩く前に● とにかく余分な力を抜くことが大切です。 手は一度 何秒か握りしめ、脱力しながら広げます。 そうすると 手のひらに軸が出来、指の力が抜けます。 あとは気分を楽にして、叩きましょう。 Dum Tk Ca Es 4つの音を基本にHanddrumを演奏します。 ●Dum● Dum(ドゥン)は、地、土と意味します。 マスターズでは、自分自身の音と表現され、演奏してみると、 Dumがとても重要な役割をしていることが分かります。 人の感情は、一日一日変化があります。 毎日どんな自分の音が出てくるのか叩いてみてください。 <叩き方>A.黒丸の所をてのひら、指のひらを使って叩く。 B.下から上へ叩くとやわらかなDum C.上から下へは強いDum D.手前から外側へは重く、ずっしりとしたDum 基本的に、Dumは おへその下に重みがずっしりと響くような音をしています。 太鼓を持っている左手でミュートをしながら出します。 (ミュート:消音・人差し指、中指、薬指の3本で鼓面をおさえる。) <マスムーディの中のDum> 中東音楽の古いリズムの中にマスムーデイというリズムがあります。 このマスムーディの中のDumを見てみましょう。 @ > 1 2 3 4 5 6 7 8 D_D___T_D___T_T_ 一回目のDumよりも二回目のDumを強調させると、 一小節の中で山と谷が出来、うねりがうまれます。 A @のうねりをさらに出す為に > > 1 2 3 4 5 6 7 8 1 2 3 4 5 6 7 8 D_D___T_D___T_T_ D_D___T_D___T_T_ > < 一小節の終りを少し弱く、二小節目の終りを強く叩き、 二小節を1つとして叩いていく。 又、二小節目の7のTKを叩く前に、6の空を長めにとると良い。 8拍子をこのようにうねりを出しながら叩いていくと(下図のように) 一本の道を8の字をかきながら歩き、進んでいく といったイメージになります。
<5拍子、7拍子などの不規則なリズムの中のDum> 風が木をゆらす音、鳥の声、などにも、私達の生活の中にも 不規則なリズムがうまれています。 私は、パンの生地をこねる時によく感じるのですが、 (この時のDumは図のように)まんなかに軸があると、 その周りを不規則に動き、まわり昇るようなイメージになります。
私の父親はいつも自然の中で土木業の仕事をしています。 その体からうまれるリズムは、このように不規則で、 8拍子の歌を歌いながら手拍子をうつと必ず手拍子がどんどんずれていきます。 そう考えると自然に近い人ほど、音痴なのかもしれないと思います。 このように、2つの例から分かるように、 Dumは音の中で基盤になる役割をしている重要な音です。 ●TK● TK(ティク)は水を意味します。 TKはこの太鼓の特権です。 水が気持ち良さそうに流れたり、風が首のうしろを通りぬけたり、 ささやかな綺麗な音を表現できます。 私は、このTKを人の優しさとつなげています。 私自身、叩いていて、おだやかな時ほど、指の力が良い具合に抜けて TKの存在感がぐんと高まります。 <叩き方> 太鼓のふちを中指や薬指で 指の力を完全に抜き 瞬発的に叩きます。 ●CA● CAの音は火を意味します。 Handdrumでこの音を叩くと、単にスパイス的役割では終わらず、 するどく強いCAから、しっとりとした優しいCAまで表現できます。 <叩き方> 縁から1cm内側を薬指で上から下に切り落とすようにして叩きます。 その他には、薬指、中指、人差し指の順で3本の指を上から下へ叩きます。 この叩き方だと、CAの表現力の幅が広がります。 ●Es● Es(エス)は空を意味します。 手を広げて、鼓面の中央にこすり付け、音を止める音と、 一拍休むという何も叩かない音が有ります。 叩かない事で、前後の音を強調させ、間を楽しみます。 この何も叩かない空間は本当は常に存在しています。 私は、この世でもあの世でもない大気のような空間をイメージしているのですが、 目には見えないけれど、いつもここにあるものなんですね。 マスターズでは、この空間を常に意識するようにしています。 この空間は何人かで倍音というものを出し合うと分かりやすい。 きっと、倍音を初めて聴こうとする方は何が倍音なのか 耳が音をつかむまで、時間がかかると思います。 まず倍音を出す為には、Dumを叩く位置よりも少し外側の部分を 中指か、薬指で下から上に速いスピードで叩いていきます。 ウォ〜ンウォ〜ンと太鼓の内側で音が周り始めたら、それが倍音です。 倍音を出し続ける為には鼓面が常に揺れている状態でなければなりません。
[振動し続ける鼓面の図]





2度目のアタックは、鼓面が出ている時に叩く。 振動し続けるということは2〜4の繰り返しということ。 鼓面は目に見えない為、これを感覚で身に付けるしかないのですが、 その時叩いているという意識が手にあると、4の悪い例の様になり、 2度目以後のアタックが鼓面がへこんでいる時になってしまう為、 倍音は一回一回途切れて膨らんでいきません。 鼓面を揺らし続ける為には、手の力を抜き、 鼓面すれすれのところで指が踊るように叩き続けるのです。 この時、太鼓と手の位置は変わらず、手首と手の間を軸にして、 手のひらをデンデン太鼓の様に躍らせます。 すると倍音は太鼓を包むように丸く形を作ります。 私は倍音を聴くことにより、空を感じられたのですが、 倍音が出ていない時に空を感じられるようになると 人の声のハーモニー、鳥の声などが耳に入ってくるようになりました。 これらの空間の中の音は常に存在しているように感じますが、 リズムを狂わせないように気を使ったり、 他の事を考えていたりすると、感じられません。 意識を閉ざしている時は聴こえて来ないのです。 ●Dum.TK.CA.Es●(太鼓を通じて) この四つの技術で、人の手から直接太鼓にあたたかいものを伝えてほしい。 時々ですが、私は伝えたい気持ちが高まる時には 手から熱い熱が出て、その熱が太鼓に吸い付くようになります。 太鼓、楽器と、一体になるとは、こういうことなのか。と思います。 四つの技術以外にも、沢山あるのですが 今はこの基礎のDum、TK、CA、Esしか伝えられません。 この四つの音でひたすら一年間同じリズムを叩いて思うことは、 太鼓に近づくことは、自分に近づくこと、でした。 そして、一年の終りになり、セッションすることは メンバーに近づくことを知りました。 [back]