Hand Drum Workshop&Seminnar presented by Hand Drum Masters
■ギルガメシュとエンキドゥと地下界(シュメールのギルガメシュ神話より)
アッカドの「ギルガメシュ叙事詩」は、シュメール人が断片的に残した神話を
みごとにまとめ上げたものです
シュメールのギルガメシュ神話は「大洪水物語断片」を含めても五、六点が残されているにすぎません
原文は断片的で、分かりにくいところがたくさんあります
そんな中でも比較的解読されている「ギルガメシュとエンキドゥと地下界」を記載します
天が地からはなれてのち
地が天とわかれてのち
人の名がつけられてのち
アンが天をとってのち
エンリルが地をとってのち
つまり天と地ができて、人間が創造され
アンが天神に、エンリルが地神になってのちしばらくのこと
ブラヌン(ユーフラテス)のほとりに、一本のフルップ木(柳)がはえていました
それはブラヌンの川水によって、立派に成長しました
ある日のこと、南風が激しく吹き、このフルップ木は根こそぎ倒されてしまいました
ブラヌンは水があふれて洪水となり、倒れたフルップ木は水面を漂って流れ出しました
女神イナンナはブラヌンの川岸に立ち、フルップ木が流れているのに気付くと
これを引き上げ、ウルクへ運び、<聖なる園>に植えました
この木材で椅子と寝台をつくろうと思ったからです
何年かがたち、フルップ木はさらに立派に育ちました
しかし、この木の根元では蛇が巣をつくっており、梢にはズー鳥(嵐の鳥)が仔を育てており
さらに木の中間のところには、魔女リリトが住み着いてしまいました
イナンナは悲しくなり、大粒の涙を流しながら兄弟の太陽神ウトゥに助力を求めました
さて、ウルクの城主、英雄ギルガメシュはイナンナの困惑を耳にし、さっそく助力を申し出ました
彼は五十ムナの重さの鎧を身に着け、七ビルトゥ七ムナの重さの斧を手に持つと
まず根元に巣くっている蛇を打ち殺しました
ズー鳥は仔を連れて山へ逃げて行き、魔女リリトは本来の住みかである砂漠へ逃げてしまいました
ギルガメシュの家来たちはフルップ木を切り倒し
こうしてイナンナは立派な椅子と寝台をつくることができました
彼女はお礼をしようとフルップ木の根元からプックとミックをつくりました
(これらは太鼓と撥だと考えられています)
*
ギルガメシュは喜んでこれを受け取り、ウルクの若者を集めて宴会を開き
この時プックとミックを大いに利用していたようです
ところが、どういうきっかけでか、大地の割れ目から地下界に落ちてしまいました
原文では「若い娘たちの叫び声のために」となっています
*
ギルガメシュは女神イナンナから贈られた大事な品物が地下界に落ちてしまったことを大いに嘆き
「私のプックよ、誰かこれを地下界から取ってくる者はいないか
私のミックよ、誰かこれを地下界から取ってくる者はいないか」
するとギルガメシュの親友で、彼の助手であるエンキドゥは
「ご主人よ、なぜ叫ぶのです。なぜ悲しむのです
そのプックを私は地下界から取って来ましょう
そのプックを私は地下界から取って来ましょう」
ギルガメシュはこの言葉に喜び、地下界に下って行くにあたっての注意事項を教えました
まず、地下界へ行くには、きれいな衣服を着ていてはいけない
よい香油を体に塗ったりしてはいけない
槍を投げてはいけない
杖を持っていってもいけない
サンダルをはいてはいけない
愛する妻にキスしてはいけない
愛する息子にキスしてはいけない
きらいな妻を叩いてはいけない
きらいな息子を叩いてはいけない
地下界では大声を出してはいけない
とりわけ、地下界で素裸のまま横たわっているニアズ神(女王エレシュキガルの夫のひとり)の
母の姿を見て、大声をあげてはいけない
ギルガメシュは理由をあげながら細かく教えましたが
山男のエンキドゥはこれをよく聴いていませんでした
そして、きれいな衣服を身に着け、よい香油を体に塗り
杖やサンダルを身に帯びて地下界へ行き、大声をあげたりしました
地下界の神は怒ってエンキドゥを捕らえて地上へ戻れないようにしてしまいました
ギルガメシュはこのことを知って大いに困惑し
ニップル市の神殿へ行って大神エンリルに救いを求めましたが
エンリルはとりあいませんでした
そこで、エリドゥ市の神殿に住む知恵の神エンキに救いを求めました
エンキはこれを聴き入れて、太陽神ウトゥに頼み、地下界に穴をあけてもらいました
ここからエンキドゥの影が地上に上がって来ました
*
ギルガメシュは親友のエンキドゥの影(本人は地下界に永遠に閉じ込められしまったようです)と
再会できたことをともかく喜び、地下界の様子をこまごまと尋ねました
それによると、地上で精一杯に暮らし、多くの息子を持った人ほど
地下界で優遇されるようです
三人の息子を持った者にはたっぷり水が与えられ
五人の息子を持った者にはよい書記のような待遇を受け
七人の息子を持った者には神に近い者とされるというようにエンキドゥが答えています
それに対して、戦場などで惨めに死んだ者については、次のような対話が見られます
*
ギルガメシュ「その死体が野原に横たわれる者をおまえは見たか」
エンキドゥ 「私は見ました」
ギルガメシュ「彼はどのような扱いを受けているのか」
エンキドゥ 「彼の影は地下界で休み場所を見出すことがないのです」
*
シュメール語版・アッカド語版共に、ほぼこのあたりで文が終わっていますが
全般的に暗く陰うつな地下界の様子をエンキドゥから聴いて
ギルガメシュの心のうちには死への恐れと、永遠の命への思いが生じたに違いありません
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