Hand Drum Workshop&Seminnar presented by Hand Drum Masters
■ギルガメシュ叙事詩(アッカド)
南メソポタミアの売る区の都城でギルガメシュが誕生したとき、神々はこれを祝福し、
彼を人並み以上のものとすることに決めました。
太陽神シャマシュは彼に美しい姿をさずけ、嵐神アダドは彼に男らしさを与え、
神々は彼を、その三分の二は神、三分の一は人間ということにしたのでした。
立派に成人してウルクの城主となったギルガメシュは、
ウルクの父親たちから息子をうばいとって家来とし、
母親たちからは娘をうばいとって宮殿にいれるのでした。
ウルクの市民たちは、ついに我慢できなくなり、
みんなが集まって天神アヌにこの苦しみを訴えました。
天神アヌはこれを聴きいれ、それから創造の神アルルを呼んで命じました。
「あなたは前に人間を創ったが、
今度はギルガメシュと力が等しいような雄々しい者を創り出しなさい。
そしてギルガメシュと戦わせるのです。ウルクの都城が平和になるように。」
女神アルルは承知し、手を洗い、心の中にアヌ神の姿を思い浮かべながら、
粘土で山男を創り上げました。
女神はこれにエンキドゥという名を与え、戦いの神ニヌルタがこれに力を授けました。
エンキドゥは全体が毛におおわれ、獣のようでした。
女のような頭髪をつけ、その毛髪はニサバ(穀物の神)のように波打っていました。
彼は土地も人も知らず、スムカン(家畜の神)のような衣裳を身にまとい、
カモシカのように草を食み、水飲み場では獣たちと共に水を飲み、喜んでいました。
ウルクからやってきた狩人は、これを見て驚き、
ウルクの城へでかけ、ギルガメシュにこの事を伝えました。
ギルガメシュは狩人にむかって、宮女を連れて行くよう命じました。
狩人は宮女を連れて出発し、三日目にはあの水飲み場へ到着しました。
狩人と宮女は身をかくして、山男エンキドゥが現れるのを待っていました。
それから一日、二日とたち、三日目になると獣たちと共に山男エンキドゥがやって来ました。
狩人は宮女に、あの山男を誘惑するよう命じ、宮女は言われた通りにしました。
エンキドゥは女の魅力に惹きつけられ、六日と七晩、宮女と交わりました。
宮女の豊かさに満足し、エンキドゥは野の獣たちへと顔を向けました。
しかしエンキドゥを見てカモシカたちは逃げ惑い、野の獣たちは彼の体から退きました。
エンキドゥは体がこわばり、膝がきかなくなり、弱くなりました。
かわりに知恵が生じ、考えも広くなりました。
宮女はエンキドゥにむかって言いました。
「賢いエンキドゥよ、なぜ獣たちと野原をうろつきまわっているのですか。
さあ、ウルクの城へ参りましょう。
そのにはアヌ神とイシュタル神が住まわれる神殿があり、
城主ギルガメシュ様が支配しています。」
エンキドゥはこの言葉を聞き、仲間がほしくなり、ウルクへ行くことを承知しました。
彼は宮女にむかって言いました。
「さあ、私をウルクへ連れて行ってくれ。
アヌ神とイシュタル神が住んでおられる神殿へ。
野牛のように力を振るうギルガメシュと、私は力を競うことにしよう。」
宮女は山男エンキドゥを連れてウルクの城へ近づきました。
そのウルクで、力の強いギルガメシュは奇妙な夢を見ました。
彼が見た夢の意味を解いてもらうために、母である女神ニンスンの住まいを訪ねました。
女神ニンスンはギルガメシュにむかって答えました。
「ギルガメシュよ、おまえと同じくらい力のあるものが野に生まれ、
近い内にここへやって来るのですよ。
おまえは彼と戦うだろう。しかしそのあとでは友となるだろう。
彼がやってきたら、私の所に連れてくるがよい。」
宮女とエンキドゥは、ウルクの城門近くへやって来ました。
ギルガメシュは城門を開き、広場へ出てエンキドゥの前に立ちはだかりました。
それから二人はつかみ合い、格闘を始めました。
彼らは牡牛のように力の限り戦いました。壁は割れ、戸は壊れました。
二人は互いに相手の力を認め、膝をかがめ、両足を地面につけて、両手を相手から離しました。
山男エンキドゥは、英雄ギルガメシュにむかって言いました。
「あなたは強い牛のなかで最も強い牛のようだ。
あなたの母なるニンスンは、あなたを人々のなかの第一のものとして産んだのだ。
エンリル神があなたに、人々の王としての位を授けられたのももっともだ。」
こうしてギルガメシュとエンキドゥは、互いの力を知り、親友となりました。
また、ウルクの城主としてのギルガメシュは、それまでの乱暴をやめ、
ウルクの人々から愛されるようになりました。
*
さて、ウルクから遥か北方の杉の森にはフンババと呼ばれる怪物が住んでおり、
杉の材木を切り出しに行く人たちに害を与えていました。
この事を聞いたギルガメシュは、親友となった山男エンキドゥと共に、
フンババ征伐に出かける事にしました。
しかしエンキドゥはあまりよくない夢を見たので、
何か悪い事が起こるかもしれないと思い、ギルガメシュにこのことを伝えました。
「我が友よ、フンババは並大抵の怪物ではない。
フンババの叫び声は洪水のようであり、その口は火、その息は死なのだ。
フンババを征伐することは、並大抵できることではない。
杉の森を守るために、エンリル神が人間たちへの恐れとしてフンババをおいたのだ。
なぜあなたはそのようなことを望むのですか。」
しかしギルガメシュは、いったん決めたことは変えようとしません。
ギルガメシュはあくまで遠征に出かけることを主張し、
エンキドゥは涙を流してこれに反対しましたが、
ついにはギルガメシュを説得することをあきらめました。
ギルガメシュはエンキドゥにむかい、その決意を語りました。
「我が友よ、太陽のもとで永遠に生きるのは神々だけであって、
人間が生きる日数というものは限られているのだ。
おまえは死を恐れているようだが、おまえの力強さはどうしてしまったのだ。
『進め、恐れるな』と叫ぶのだ。もし私が倒れれば、私の名は子孫たちに伝わるだろう。
『ギルガメシュは、恐ろしいフンババとの戦いで倒れたのだ』と。」
ギルガメシュとエンキドゥは、特別に作らせた武器を持ち、遠征の身支度をしました。
ウルクの長老達はギルガメシュに、フンババは手ごわい相手であることを告げ、警告しました。
しかしギルガメシュはその言葉を聴かず、ウルクの長老たちも忠告をあきらめて、
彼らの遠征に祝福を与えました。
二人はいよいよ杉の森を目指して進んで行きます。
何十里か進み、食事を取り、また何十里も進み、夜になれば宿営地で休み、
こうして普通なら45日かかるところを3日で行ってしまいました。
ついに杉の森が見えてきましたが、その入り口にはこれも恐ろしい姿をした
フンババの手下が見張りに立っています。
さすがのギルガメシュも、それを見ていくらか怖気づいた様子を示しましたが、
エンキドゥに励まされ、勇気をふるって杉の森へ入っていきました。
二人は杉の森の谷間を進むうち、夜のとばりがおりたので、仮の宿を設けて一眠りしました。
ところがギルガメシュは不吉な夢を三度も見て飛び起き、
エンキドゥにその夢のことを語りました。
エンキドゥはだまってギルガメシュの不吉な夢の話を聴き、
それを吉に解釈して元気づけ、さらに森の奥へと進んで行きました。
ギルガメシュは重い斧で杉の木を切り倒して道を開きました。
ついに森の最も奥の部分に到達すると、怪物フンババが怒り狂って叫びました。
「誰がやって来たのだ。そして私の山に生えている杉を切り倒しているのだ。」
ギルガメシュとエンキドゥは、二人の守り神である太陽神シャマシュに祈りを奉げ、
助けを求めました。
シャマシュは天から二人にむかって言いました。
「恐れるな。私が手助けするから、フンババに近づいて行け。」
そして天から力強い風が吹き出し、フンババをめがけて吹付けました。
それは寒風、強風、熱風など、八つの風でした。
フンババは目をあけていられなくなり、進むことも戻ることもできなくなりました。
フンババはギルガメシュにむかって言いました。
「ギルガメシュよ、私を助けてくれれば、おまえの家来になる。
この杉の森の杉は切り倒し、おまえの家を建ててやろう。」
しかしエンキドゥはギルガメシュに、その言葉に惑わされないよう言いました。
ギルガメシュはエンキドゥの言葉を受け入れ、斧を手にとってフンババの首に切りつけ、
三度目にフンババはついに倒れました。
二ベール(一ベールは約二時間、あるいはこの間に進む距離)の広がりに渡って、
杉の森はざわめき、その叫び声はサリアとラブナンの山に響き渡りました。
二人はフンババの手下を打ち倒し、杉の大木を切ってユーフラテス川の岸へと引いて行きました。
こうして二人は、意気揚々ウルクの城へと帰りつくことができました。
*
ウルクのエアンナ神殿には、愛と美の女神イシュタルが住んでいました。
ギルガメシュが遠征から戻ってきたことを聴いて宮殿に出かけて行き、
立派な姿のギルガメシュを見て心にいとおしく思いました。
女神イシュタルはギルガメシュにむかって申しました。
「ギルガメシュよ、来て私の夫になってください。
そうすれば、私はあなたに、ラピスラズリと黄金で飾った二輪車を差し上げましょう。
また、杉の木で建てた家も差し上げましょう。
山や野原が産み出すものを、山羊や羊や立派な馬や牛を差し上げましょう。」
しかしギルガメシュは女神イシュタルの申し出を受け入れず、言いました。
「あなたを妻にするために、私はなにを差し上げたらよいというのですか。
あなたは人を傷付けることしか知らないのではないですか。
あなたの愛はどれほど長く続いたことがありますか。
あなたが若いころ愛したタンムーズは、のちには毎年苦しみ嘆くようになってしまったでしょう。
あなたは斑のある羊飼い鳥を愛したことがあったが、のちにはその翼を引き裂いてしまい、
この鳥は今でもよく『カッピ(私の翼よ)』と泣いています
あなたはライオンを愛したことがあったが、のちにはそのために罠を掘り、
牡馬を愛したことがあったが、のちにはそのためにむちを用意し、泥水を飲ませたのです。
あなたは牧人を愛したことがあったが、のちには彼を打ち叩いて、狼に変えてしまったでしょう。
あなたは父上の庭番イシュラヌを愛そうとしたことがあったが、イシュラヌがこれを拒むと、
彼を打ち叩き、もぐらに変えてしまったでしょう。
だからあなたが私を愛するとしても、私にはきっと彼らと同じ運命が待っているに違いない。」
これを聴いた女神イシュタルは烈火のように怒り、
天上に上って行き、父神アヌにむかって言いました。
「我が父よ、ギルガメシュが私を辱めました。
私が今までやったことを数えたてたのです。」
天神アヌは娘の女神イシュタルにむかって言いました。
「それはおまえ自身のせいではないか。
おまえがおろかなことをたびたびやったからであろう。」
女神イシュタルは承服せず、さらに腹を立てて父神アヌに告げました。
「我が父よ、私のために<天の牛>を作ってください。
それでギルガメシュを滅ぼしたいのです。
もし私のために<天の牛>を作ってくださらなければ、
私は死者たちが住む冥界の扉を開き、死者たちを甦られて、
死者が生者より多くなるように致します。」
アヌ神はイシュタルにむかって言いました。
「もしおまえの言う通りにすると、七年間の不作がやって来て、
人々は飢えに苦しむことになるぞ。」
イシュタルはアヌ神にむかって言いました。
「私はそのことを考えて、人々のために穀物を蓄え、
獣たちのためには草を用意してあります。」
そこでアヌ神はしかたなく巨大な<天の牛>をつくってやりましたが、
これは天の十二宮の牡牛座から引きおろしたともいわれています。
<天の牛>は地上におり、
鼻息荒くウルクの城内にいたギルガメシュとエンキドゥに襲いかかりました。
しばらくギルガメシュと力を競ったのちに、
<天の牛>はエンキドゥにむかってとびかかりました。
<天の牛>は口から泡を吹き出し、尻尾を荒々しく振り、
角をエンキドゥにむけて突進しましたが、エンキドゥは角を捕まえ、
剣を突き刺してこれを打ち倒しました。
それから彼は<天の牛>の心臓を取り出し、守護神である太陽神シャマシュに捧げ、
二人並んで座り、シャマシュに礼拝をしました。
女神イシュタルは怒り狂い、
ウルクの城壁にのぼってギルガメシュたちに呪いの言葉を投げつけました。
「私をあなどり、<天の牛>を殺したものに呪いあれ。」
エンキドゥはイシュタルの言葉を聴いて、
<天の牛>のももを引き裂き、女神の顔にむけて投げつけました。
イシュタルはおつきの女官たちを集め、悲嘆の声をあげました。
それからギルガメシュとエンキドゥは、盛装してウルクの街路を行進し、宮殿で祝典をあげました。
*
その夜中、エンキドゥは突然起き上がり、近くに寝ているギルガメシュを起こして言いました。
「我が友よ、私は大神たちが会議をしている夢を見た。
そこにはアヌ神、エンリル神、エア神、シャマシュ神が集まっていた。
まずエンリル神が言った。
『彼らは<天の牛>を殺し、<杉の山>をあらしてフンババを殺したために、
その内の一人が死なねばならぬ。
…エンキドゥが死ぬべきだ。ギルガメシュは死んではならぬ。』
次にシャマシュ神が言った。
『彼らは私の命令によって<天の牛>とフンババを殺したのだ。
それなのに死ななければならないのか。』
するとエンリル神は怒って言った。
『なぜあなたは彼らの味方をするのだ。』」
夢の話をギルガメシュにしてから、エンキドゥは病にとりつかれ、日ごとに弱っていきました。
ギルガメシュは涙を滝のように流して言いました。
「愛する兄弟よ、なぜおまえは死なねばならず、私は無実なのか。
我が兄弟を我が目で再び見ることなく、死霊の門のところに座っていなければならなのか。」
エンキドゥはうわごとのように言いました。
「私は杉の森の入口まで行って、背高い杉の木を見たが、その入口は私にとって災厄であった。
私にとって、私をウルクに連れて来た宮女は災厄であった。
私はおまえを呪ってやる。」
天のシャマシュ神はエンキドゥの言葉を聴き、エンキドゥにむかって言いました。
「エンキドゥよ、なぜおまえは宮女を呪うのか。
彼女はおまえに神にふさわしいパンを食べること、
王者にふさわしい酒を飲むこと、立派な衣服をつけることを教えたではないか。
そしておまえに、よき友ギルガメシュを与えたではないか。
おまえはいま、親友ギルガメシュによって、立派な寝台に横たわることができ、
彼はそのそばに座っているではないか。
ギルガメシュによって、ウルクの人たちはおまえへの悲しみで心をいっぱいにしているのだ。」
エンキドゥは、太陽神シャマシュの言葉を聴き、心の落ち着きを取り戻しました。
次の夜、エンキドゥはまたも夢を見ました
「友よ、私はまたも不吉な夢を見た
天がざわめき、地も音を立てていた
鷲の爪のような爪を持つ冥界の番人が私に飛びかかり、私の手も鳥のようになってしまった
彼は私を冥界の女王イルカルラの住まい、<暗黒の家>と呼ばれるところへ連れて行った
そこは、入る者は出ることがなく、歩み行くものは戻ることのないところで
住む者は光を奪われ、ほこりと粘土を食べ物にし、鳥のように翼のついた着物を身につけるところだ
私が入って行った<ほこりの家>には、老若の神官や呪術師や下働きが住んでいた
鷹に乗って天上へ去ったキシュ王エタナや、家畜の神スムカンの姿も見えた
冥界の女王エレシュキガルのまえには、冥界の記録係りベーリット・セーリが書板を持ち
人間どもの運命を読み上げていた」
エンキドゥの体は日ましに弱り、十二日目についにこのギルガメシュの親友は息絶えました。
ギルガメシュは親友エンキドゥの胸に手を当てましたが、その心臓は動いていませんでした。
彼は親友のなきがらに薄布をかけ、声を張り上げて涙を流し、毛髪をかきむしり、
体に付つけたものを引き裂きました。
そして、エラムマクの木で作った台と、
紅玉やラピスラズリで作った容れものをエンキドゥのなきがらの前に運び入れ、
容れものには蜜やバターをいっぱい入れて親友に供えました。
*
エンキドゥの埋葬が終わると、ギルガメシュは<不死>を求めて旅に出る決意を固めました。
親友エンキドゥの死は、単に親友を失うという苦しみのみならず、
人間は死なねばならないのかという、死への恐れをギルガメシュの心に植え付けたのでした。
「私もいつかは、エンキドゥのように死ななければならないのか。
悲しみが私の心をいっぱいにしてしまった。私は死が恐ろしい。」
ギルガメシュは野原を横切り、山の狭間を進みました。
永遠の命を得たという人、ウバラ・トゥトゥの息子ウトナピシュティムを求めて。
山のふもとではライオンを見て震えあがり、月神シンにむけて必死に祈りました。
シンはギルガメシュの祈りを聴き届け、ギルガメシュは力がみなぎるのを感じて剣を抜き、
ライオンに打ち勝ちました。
次にギルガメシュは双子山マーシュ山に到着しました。
そのふもとには地下の道への入口があり、その一部は冥界に通じています。
その入口には、恐ろしい姿をしたサソリ人間がいて、辺りを見張っていました。
ギルガメシュは恐怖のために顔が青ざめました。
サソリ人間はギルガメシュにむかって言いました。
「おまえはなぜ、こんなに遠い道のりを旅して来たのか。
渡ることの難しい海を横切ってまで、おまえがここに来た目的はなんなのか。」
ギルガメシュが答えるには、
「不死をえたというウトナピシュティムに会うためた。
死と生について、私はウトナピシュティムにたずねたいのだ。」
「ギルガメシュよ、いままでそれをなしたものは誰もいない。
この山をこえた者はだれもいない。この地下道の闇は深く、光がないのだ。」
「悲しみと苦しみがあろうとも、寒さと暑さがあろうとも、ため息と涙があろうとも、
私は行きたいのだ。さあ、山の地下道の入口をあけてくれ。」
サソリ人間はギルガメシュに言いました。
「行け、ギルガメシュよ。マーシュの山をこえることを許してやろう。
元気で戻ってくることだ。山の入口はおまえのために開かれるだろう。」
ギルガメシュはサソリ人間の言葉に感謝し、地下道の太陽の道に入りました。
ギルガメシュは暗闇の道を進みました。
一ベール、二ベール … 十ベール。
十一ベール過ぎると太陽の光線がさしてきました。
十二ベール過ぎるとそこは太陽の輝きで満ちていました。
地下道の出口の外には、紅玉石やラピスラズリの木々が生えており、
それらにはぶどうの実やほかの果実もたれ下がっていました。
そこは海の近くの楽園でした。
ギルガメシュが進んでいくと、石の建物があり、ぶどう酒を飲ませる店のようでした。
ギルガメシュはぶどう酒の女将シドゥリにむかい、
親友エンキドゥの死と、不死を求めての旅のことを物語りました。
女主人シドゥリの言うのには、
「ギルガメシュよ、あなたはどこまでさまよい行くのです。
あなたの求める命は見つかることがないでしょう。
神々が人間を創られたとき、生命は自分たちの手の内にとどめておき、
人間には死をわりふられたのです。
ギルガメシュよ、あなたはあなたの腹を満たしなさい。昼も夜も踊って楽しみなさい。
衣服をきれいにし、頭を洗い、水を浴びなさい。
あなたの手につかまる子供たちをかわいがり、あなたの胸に抱かれた妻を喜ばせなさい。
それが人間のなすべきことだからです。」
しかしギルガメシュは決意を変えませんでした。
彼はウバラ・トゥトゥの息子ウトナピシュティムが住む場所をたずねました。
それは<死の海>のかなたの、二つの川が合わさるところということでした。
*
ギルガメシュは<死の海>のほとりに辿り着き、そこで渡し舟を見つけました。
その先導はウルシャナビという名で、ウトナピシュティムに仕えていました。
ギルガメシュは舟にのり、やっとのことでウトナピシュティムのところに到着しました。
ウトナピシュティムは、妻と共に、永遠の命を得て
この遠方の二つの川が合わさるところに住んでいました。
ギルガメシュはウトナピシュティムにむかって言いました。
「ウトナピシュティムよ、あなたは弱そうで、私とあまり変わらない。
あなたは力強い英雄かと思っていたが、そこになすこともなく座っているだけだ。
どのようにして、永遠の命を得て、神々の集いに加わったかを語りたまえ。」
「ギルガメシュよ、おまえに秘密を教えてあげよう。これは神々の秘密なのだが。
ユーフラテスの流れに沿うシュルッパクは、おまえも知っているように古い町だが、
そこには神々と人間が住んでいた。
ところがあるとき、大いなる神々は洪水を起こしてこの町を滅ぼすことにしたのだ。
そこにいた神々は、父神アヌ、助言者エンリル、代表者ニヌルタ、水路監督エンヌギ、
そして知恵の神エアたちであった。
人間の味方であるエア神が、私の住んでいる葦の小屋にむかって告げてくれた。
『シュルッパクの人、ウバラ・トゥトゥの息子よ、家を打ち壊し、舟を造れ。
持ち物をあきらめ、おまえの命を救え。
すべての生きものの種子を舟へ運びこめ。
おまえが造るべきその舟は、その寸法を定められた通りにせねばならぬ。
その間口、その奥行きは等しくせねばならぬ。』
私は一族の者たちを集めて、命ぜられた通りの方舟を造り始めた。
大人たちは材木を運び、子供たちは水漏れを防ぐために塗る瀝青(天然アスファルト)を運んだ。
五日目にはその骨組みができ上がったが、その表面積は一イクー(約3600u)、
その四方の高さはそれぞれ十ガル(約60m、1ガルは約6m)、それに六つの覆いの板を張り、
内部は七つの場所に、また床は九つに分け、真中には木の栓をはめ込んだ。
それから舟の中央に帆柱が立てられ、たくさんの瀝青が流し込まれた。
七日目に方舟は完成し、私は持ち物をすべてここに入れ、
一族の人たちや野の獣や職人が乗り込んだ。
翌日の朝、太陽神シャマシュは雨を降らせ始めた。
天候神アダドはその真中で雷を鳴らし、
嵐の布告使シェル・ラットとハニシュは真っ先に進んで行った。
冥界の神エルラガルは荒れ狂って、帆柱を倒し、ニヌルタ神は水路をあふれさせた。
神々の集まりであるアヌンナキは火を燃やし、国土はその輝きで燃えさかった。
一日中、嵐が吹きすさび、戦争のようだった。
人々はお互いに見分けることができず、
神々はあわてて天へとのぼり、犬のように縮こまって身をひそめた。
女神イシュタルは叫びわめいた。
『みよ、古い日々はすべて粘土になってしまった。
神々の集いで私がよくないことを言ったからだ。
人間達を滅ぼす戦いのことを言ったからだ。
この私こそ、人間たちを産み出し、海の魚の卵のようにいっぱい増やしたのに。』
女神は泣き、心沈んだ神々も泣いた。
六日と六晩にわたって風と洪水が押しよせ、台風が国土を荒らした。
七日目がやってくると、洪水の嵐は戦いにまけた。
海は静まり、嵐はおさまり、洪水は引いた。
空は静かになり、すべての人間は粘土になってしまった。
私が方舟の蓋を開くと、光が入って来た。私は座って泣いた。
海のかなたに陸が見えてきた。十二の場所に陸が現れた。
方舟はニシルの山にとどまり、そこで六日がたった。
七日目がやってくると、私は鳩を解き放してやったが、鳩は休み場所がないので舞い戻って来た。
次に私は燕を解き放してやったが、燕は休み場所がないので戻って来た。
次に私は大烏を解き放してやった。
大烏は水が引いたのをみて、ものを食べ、ぐるぐるまわり、帰ってこなかった。
そこで私はすべての鳥を解き放し、神々に犠牲を捧げ、お神酒を注いだ。
神々はその香をかいで、蝿のように集まってきた。
女神イシュタルもやって来て言った。
『この日々を心にとどめ、決して忘れはしまい。神々よ、犠牲のほうへ来てください。
エンリル神は犠牲のほうに来てはならぬ。
なぜなら彼は考えなしに洪水を起こし、私の人間たちを破滅させたからだ。』
エンリル神は方舟を見て腹を立てて言った。
『生き物が助かったというのか。ひとりも生きてはならなかったのに。』
エア神がエンリル神に言うには、
『神々の主人である君は、なぜ考えなしに洪水を起こしたのだ。
洪水のかわりにライオン、狼、飢饉、ペストで人間には十分だったのに。
それに神々の秘密を明かしたのは私ではない。
賢き者(アトラ・ハシース)に夢を見せただけで、彼は神々の秘密を聞きわけたのだ。
今は彼に助言してやるべきだ。』
エンリル神は聞きわけて、方舟に入り、祝福するために私の額に触れ、そして言った。
『これまでのウトナピシュティムは人間でしかなかった。
今よりウトナピシュティムとその妻は、我ら神々のごとくなれ。
ウトナピシュティムは、遥かなる地、二つの川が合わさるところに住め。』
こうして私は、この二つの皮が合わさる地に住むようになったのだ。
だがギルガメシュよ、おまえのために神々は集うであろうか。
永遠の命を求めるというが、おまえは六日と六晩眠らないでいられるか。」
ウトナピシュティムのこの物語を聴いていたギルガメシュは、
この言葉と共に眠気を感じ、眠り始めました。
ウトナピシュティムは彼の妻にむかって言いました。
「永遠の生命を求めるこの英雄も、眠さには打ち勝てないようだ。
ずるいのが人間だから、彼はおまえをだますだろう。
さあ、彼にパンを作ってやり、眠った日数がわかるように枕許に置くがよい。」
ウトナピシュティムの妻は毎日パンを作り、それを枕許に置きました。
六日たって、第一のパンはすっかり腐ってしまい、第二のは悪くなり、大三のは湿り、
第四のは皮が白くなり、第五のは色が変わり、第六のだけは焼き立てでした。
ウトナピシュティムがギルガメシュを起こすと、ギルガメシュは言いました。
「つい眠くなって、一眠りしたようだ。」
ウトナピシュティムは枕許のパンをギルガメシュに示し、六日たったことを告げました。
ギルガメシュはびっくりし、死が間近にいることを感じ、恐怖につつまれました。
そこでウトナピシュティムはギルガメシュに言いました。
「ギルガメシュよ、おまえは苦労してここまでやってきたから、秘密のことをおまえに教えよう。
海のあるところに、人間が命を新しくすることができる
シーブ・イッサヒル・アメル(「老人を若くする」という意味)という草がある。
おまえがこの草を手に入れるならば、おまえは生命を得るだろう。」
ギルガメシュはこの言葉に喜び、海のその場所へ行き、
重い石を両脚にしばりつけて水中に飛び込みました。
その草はバラのようにとげを持っていて、彼の手にそれが刺さりましたが、
彼は杉に重い石を両脚からはずし、その草を持って水面に浮き上がりました。
ギルガメシュはこの特別な草を手に入れたことで満足し、
ウルクまでついて行くことにした船頭ウルシャナビと共に
三十ベール行って、夜を過ごす用意をしました。
そこで冷たい水が湧き出る泉を見たギルガメシュは、泉におりて水浴をしました。
そこに蛇がやって来て、ギルガメシュが海中から取ってきた大事な草を食べてしまい、
ぬけがらを残して行ってしまいました。
ギルガメシュは座って涙を流し、言いました。
「ウルシャナビよ、誰のために我が手は骨折ったのだ。
誰のために、我が心の血は使われたのだ。私自身は恵みが得られなかった。」
ギルガメシュは船頭ウルシャナビと共に、故国ウルクの城に帰りつき、
そののち彼は、すべてのものを国の果てまで見た人、すべてを知った人、
はるか遠国を旅し疲れ果てて帰りついた人として、
ウルクの人たちとその子孫たちに語り伝えられました。
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