Hand Drum Workshop&Seminnar presented by Hand Drum Masters

■エヌマ・エリシュ(バビロニアの創世記/アッカド)
 天にも地にもまだ名前がつけられていなかった頃
すなわち世界がまだはっきりした形をとっていなかった頃
ただ男神アプスー(淡水)とムンム(霧の姿をした生命力)
女神ティアマト(塩水)だけがいました
ティアマトはすべてのものを産んだ母神だとも言われています
この原初世界でアプスー(淡水)とティアマト(塩水)が混ざり合って
神々が生まれはじめました
まず男神ラフムと女神ラハムが生まれました
この二柱の神はたちまち大きくなり、この二神から次にはアンシャルとキシャルが生まれ
アンシャルとキシャルはアヌ(天神)を生みました
このアヌからはヌ・ディン・ムド(創造者)と呼ばれたエア神が生まれましたが
エアは知恵も力も優れており、神々のだれもエアにはかないませんでした
こうして神々の数が増えてくると、しだいに群れをなし大さわぎをはじめました
ティアマトは我慢しましたが、アプスーは不愉快に思い
家来のムンムと共にうるさい神々をどうするか相談しました
この相談に気付いた知恵の神エアは、呪文を唱えてアプスーを眠らせ
身に付けている冠と輝く衣服などを取り上げ、自分の身につけると
アプスーを殺し、ムンムをしばって閉じ込めました

 エアは原初の淡水の海(アプスー)の上に自分の住まいを建てて
それを<アプスー>と名づけ聖所と定めました
しばらくしてエアの妻ダムキナは身ごもり、マルドゥーク神が生まれました
エアはことのほか喜び、普通の二倍の能力を与えたので
この神の目は四つ、耳は四つあり、口を動かすと火が燃え
たくましいその体は光り輝いていました
大神のアヌは遊び道具として四つの風をマルドゥークに与えると
マルドゥークは土くれをつくり、つむじ風たちに運ばせてアシの沼地をつくり出し
ティアマト(塩水)を濁らせ、不愉快にさせました

 他の神々もこのことを不愉快に思い、ティアマトに言うには
「アプスーが殺されたとき、あなたは何もしませんでしたね
 マルドゥークの四つの風のために我々はゆっくり眠ることもできません
 ぜひ仇をうってください」
ティアマトはこの言葉を受け入れ、マルドゥークに対抗できる風と怪物‥
ムシュマッヘー(七またの大蛇)、バシュム(毒蛇)、ムシュフッシュ(サソリの尾をした龍)
ラハム(海の怪獣)、ウガルルム(巨大ライオン)、ウリディンム(狂犬)
ギルタブリル(サソリ人間)、激しい嵐、クリール(魚人間)、野牛をつくり
また息子のキングを軍勢の司令官に任じました
そして彼に天界の至上権を表す<天命のタブレット*1>を与えました

                      *

 ティアマトとその味方が戦いの用意をしていることは、じきに知恵の神エアの耳に届きました
エアは祖父アンシャルのところへ助けを求めに行くと
アンシャルは困惑し、しばらく考え込んだ後に言うには
「この危機を乗り切ることができる者、それはマルドゥークをおいてほかにない!」

 エアの息子であるマルドゥークは喜んで引き受け、これこそ力を試し
天上界で勢力をうる機会と考えて言うには
「もし私が大洪水を起こす竜(ティアマトは大きな竜でもあった)を捕らえ
 あなた方の命をお助けできたならば、私に<天命>を授けてください
 それによって私は、神々の集会で最高の位置につき、私の命令は至上のものとなるように!」

 マルドゥークの頼みを聴くとアンシャルは
父母神ラフムとラハムやその他の神々に今までの経緯を伝え
神々は、マルドゥークに<天命>を授けることにしました

                      *

 マルドゥークは、弓と矢および三つ股の鉾をとり、稲妻と燃える炎をとり
ティアマトを捕らえるための網を手に持ちました
また、東西南北の四つの風、砂嵐や雷雨のような七つの恐ろしい風を用意しました
マルドゥークは四種類の嵐の怪物…<殺し屋>、<容赦ないもの>、<怒涛のように押し寄せるもの>
<翼のあるもの>がひく車に乗り、それらは口から毒の泡をはき、見るからに恐ろしい光景でした
彼は鎧と長衣を身につけ、口には呪文を唱え、頭からは神聖な怖るべき光を発していました

 そして両者の戦いが始まりました
マルドゥークは恐ろしい風をティアマトに向けて放つと
ティアマトはこれを飲み込もうと口を開きます
荒れ狂う風はティアマトの腹の中に入り、これを大きく膨らませました
その時、マルドゥークは矢をティアマトめがけて放つと
腹が破れ、矢は心臓にあたり、ティアマトは倒れました

 ティアマトが殺されると、その仲間は恐れおののき
マルドゥークに捕らえられてしまいました
司令官キングも縛りあげられ、マルドゥークは彼から<天命の書板>を取り上げて
自分の胸につけました

 それからマルドゥークは大女神ティアマトの死骸を眺め、まず頭骸骨を打ち砕き
それから体を二つに切り裂き、一つを天に持ち上げて、天として張りめぐらしました
海の女神ティアマトの体には大量の塩水が含まれているので、マルドゥークは番人をおき
大雨にならないように水の流出を監視させる事にしました
次にマルドゥークは、ここに天の大神殿エ・シャラを建てさせ
三柱の大神アヌとエンリルとエアを、それぞれ適した場所に住まわせました
つまり天、空(大気)、アプスー(天水)がそれです

 それからマルドゥークは天体をつくり出して天におきました
まず彼は、天に神々の似姿としての星々と星座をおき
一年を定め、十二の月にそれぞれ三つずつ、つまり三十六の星座を定めました
それから天にアヌの道、エンリルの道、エアの道の三つの領域を設け
天の東には太陽の入口、西には出口をつくりました
次にはティアマトの体からつくった天の内側に月神シンをおき、夜の飾りとしました
月神シンは、月の初めには冠の形をし、だんだん角の形になり
満月の時には太陽神シャマシュと向かい合いになり、また欠けてもとに戻ります
月神シンが再び太陽神シャマシュと向き合いになるのは、二十九日目です
次にマルドゥークはティアマトの水分を集めて雲をつくり、雨や霧もつくりました
次には、ティアマトの頭を取り、これで山をつくり出し、地下水から川を流れ出させました
またティアマトの両目からは、ブラヌン(ユーフラテス)川と
イディグラト(ティグリス)川が流れ出るようにしました
ティアマトの乳房だったところには、特別に大きな山をつくり
そこから豊かな水が湧き出るようにしました
マルドゥークはティアマトの尾の部分をひねって
天の<結び目>につなぎ、次にティアマトの下半身で地をつくりました

 こうして天と地の創造がすむと、マルドゥークは地上に聖殿を建てて祭式を定め
キングから取り上げた<天命のタブレット>をアヌ神に戻しました
マルドゥーク側の神々、すなわちラフムとラハム、アンシャル、アヌ、エンリル、エア
そして彼の母親ダムキナたちは大いに喜び、天の神々はすべて集まりました
そしてマルドゥークのまえに平伏し、これこそ我らの王と叫びました
マルドゥークが口を開き、言うには
「あなた方の住む神殿エ・シャラに対して、下界にも立派な神殿を造営したい
 そこに祭式の場をつくり、私の王権を末永いものにしたい
 神々が集会にやってくる時、そこは神々の安らぎの場となることだろう
 私はそこをバーブ・イル(神の門。バビロン)」と名づけることにしよう」

                      *

 またマルドゥークはティアマト側の神々を集め、言うには、
「ティアマトをそそのかし、戦いを引き起こした者は誰か
 その者を引き渡せば、他の者たちは許されるだろう」
この言葉を聴いた神々が、天地の神々の王であるマルドゥークに答えて言うには
「ティアマトをそそのかし、戦いを引き起こしたのはキングだ」

 そしてマルドゥークはキングの血から、最初のアメール、すなわち人間をつくりだしました
人間たちは訳が分からぬままに、マルドゥークの考えに従って
神殿の建設にたずさわることになります
マルドゥークは、その言葉どおり、神々の居場所を上界と下界に分けることにし
上界に三百柱、下界に三百柱、合わせて六百柱の居場所を決めました
神々が口を開いてマルドゥークに言うには
「我らの主よ、ありがとうございました
 我らはこれから、安息のための聖所をつくることに致します」
マルドゥークがこれを聴いて喜んで言うには
「そうだ、バーブ・イル(バビロン)を建てて、プラック(聖所)と名づけるがよい」

 すべての神々は働き始め、一年目には煉瓦をつくり
二年目にはエ・サギラ神殿を築き上げました
また、ジッグラト(いわゆるバベルの塔)を天高く築き上げ
そこにマルドゥーク、エンリル、エアの神殿を設けました
エ・サギラ神殿ができあがると、次にはすべての神々が自分の聖所を建て
それからマルドゥークは祝宴を開いて父祖の大神たちを招きました
それからエ・サギラ神殿で祭式が行なわれ、あらゆるお告げがきめられ
すべての神々の役割が定められました
マルドゥークは、彼が念入りに仕上げた弓をとり、これを大神たちに見せました
アヌがそれを手にとり、神々たちにむかって言うには
「これは私の娘、その名は<背高き木>、<征服者>、そして<弓星>であり
 私はこれを天空に輝かせよう」
そして大神たちはこれを天空のどこにおくかを決めました

 大神たちはマルドゥークを褒めたたえ、彼を天と地の神々の主と定めました
アンシャルが言うには
「主の命令には上界でも下界でも従順を
 主の支配は最高のものたらんことを
 主の功績は語りつがれるべし
 主の父祖たちに絶えない供物を
 人間たちが主をかしこみおそれることを
 奴隷たちが神を忘れぬことを
 神と女神に供物が捧げられんことを
 彼らが神々の地をすぐれたものとせんことを
 人間たちが神々に仕えんことを」

 そして言うには、
「さあ、主を五十の名*2で呼ぼう」
そして、五十の名でマルドゥークを呼び、褒め称えました

 *1 天命のタブレット…神々の主権者の伝統的象徴とされ、それを手に入れることが     主神になるための要件だったらしい。主神はそれに裏付けられて神々をはじめ     万物の天命を定めた。しかし主神の承認には神々の合意が必要とされる  *2 五十の名…ルガルドゥルマハ(ドゥルマハ:天の第一級地帯の主)、ルガルデイ     メル・アン・キ(天地の神々の王)、ギビル(火神)など [back]