Hand Drum Workshop&Seminnar presented by Hand Drum Masters

■アトラ・ハシース(アッカド)

 「ギルガメシュ叙事詩」には大洪水物語が述べられていますが
それはこの叙事詩の中では単なるエピソードにすぎません
それを単独にまとめ上げたのが、この「アトラ・ハシース」です
これはアッカド語で「最高の賢者」という意味で、シュメール語版「大洪水物語」のジウスドラ
「ギルガメシュ叙事詩」のウトナピシュティム、「創世記」のノアにあたります

 世界の始まりの頃、神々が労役に服していましたが、その仕事は重く 仕事の量は極めて多いので、神々はだんだんと不満をもらすようになりました その頃の大神たちは次のようなものでした まず神々の集まりであるアヌンナキは、七人の大神からなっていました 王アヌ、戦士エンリル、式武官エンヌギらがそれです のちにアヌは天へのぼって天神となり、大神のひとりエンキ(知恵の神エアと同じ)は 地下の深淵アプスーにおりました エンリルからは多くの神々が生まれました 世界をすっかり造り上げるのに四十年かかりました 多くの神々は毎日毎晩、仕事を強いられ、ついに反逆の火の手を上げました  エンリルの息子たちである神々は、堀道具や運び道具に火をつけ 夜になってから、アヌンナキの顧問であるエンリルの神殿を包囲しました エンリルは眠っていましたが、番人カルカルはこれに気付き 宰相ヌスクと共にエンリルの寝室に行きました 「我が主人よ、神殿が包囲されております。戦いになりそうでございます」  エンリルは飛び起き、神殿の扉を固めて武器を用意するよう命じました  宰相ヌスクがエンリルに言うには 「我が主人よ、息子たちをおそれることはありません  アヌ神とエンキ神に来て頂いて、相談をなさいませ」  エンリルはすぐに使者をこっそり送り出し、アヌとエンキを呼び寄せ アヌンナキの大神たちの集まりが開かれました まずエンリルが言いました 「神々が私に刃向かうとは何事か。私の神殿に押し寄せるとは何事か」 するとアヌが答えました 「誰が先に立って反乱を起こしたのか、ヌスクに調べさせよう  ヌスクよ、門を開いて外に出て、神々に挨拶した上で  アヌンナキの名において、誰が反乱を言い出したのかを訪ねなさい」  宰相ヌスクは門の外へ出て、言われた通りに尋ねました 神々は口々に、それはすべての神であって、仕事があまりに多く、あまりに重いからだと叫びました  ヌスクから報告を受けると、エンリルは涙を流し、悔しがって言うには 「大なるアヌ神よ、神々のひとりを呼び出し、死を与えてください」 しかしアヌはこれに賛成せず 「どうして彼らだけを責めることができるだろうか  彼らの仕事はあまりにも多く、あまりにも重かった  私たちは、彼らに仕事を負わせすぎたようだ」  そしてアヌンナキの大神たちは、神々に代わって労働をする人間をつくり出すことを思いつきました さっそく出産の女神ベーレト・イリーと、神々の産婆マミが呼ばれ また原初人ルルーをつくり出すための知恵は、知恵の神エンキに任されました  エンキは月の一日、七日、十五日に浄めの儀式を行ないました そしてウェー・イラ神を原初人ルルーの原型とすることにし 女神ニントゥがこの神から肉と血をとって粘土にまぜました そこに十四人の出産の女神たちが集まり、粘土に呪文をとなえ 十四に分けてそれぞれの女神に渡しました この粘土をもとにして、十四女神のうち七人は男を産み、七人は女を産み こうして人間がこの世に現れました  人間たちはひとたび地上に姿を現すと、急速に増えはじめました 彼らは神殿を建て、運河を掘り、土手を築き、食べ物をつくり出してくれましたが あまりにも騒がしく、神々の眠りを妨げるほどになりました 神々は人間に罰を与えることを決め、エンリルの命令によって 天候神アダドは雨を降らさなくなり、風が吹き荒れて地は乾き、田畑はすっかりだめになりました ところが水神エンキは人間たちを滅ぼすことに反対だったので ときどき水を送ったり、天候神アダドに頼んで雨を降らせたりさせました  神々の集まりはエンキを非難し、呪いによって反対できないようにしてから 大洪水を起こすように命じました エンキが言うには 「何のために私を呪いで縛るのですか  何のために私が大洪水を起こさなくてはならないのですか  そういうことは、エンリル神のやるべきことです」  そこでエンリルは自ら命令を下し、大洪水を起こして人間たちを滅ぼすことにしました 腹を立てたエンキは、人を守り神とするアトラ・ハシースの夢の中に現れ、言いました 「アトラ・ハシースよ、私がこれから言うことをよく聴きなさい  おまえの葦の家を壊して、舟をつくりなさい  それに屋根をつけて、瀝青(天然アスファルト)で固めなさい  そこにおまえの持ち物をすっかり入れて、生命を失わないようにしなさい  これから七晩たつと、大洪水がやってくるだろう」  アトラ・ハシースは家族を呼び寄せ、事情を話し、大きな舟を造り始めました それができ上がると、動物や鳥たちを運びこみ、家族の者たちを乗せました 空模様が変わり、天候神アダドが雷を鳴らし、風が荒れ始め、舟は大きく揺れました 川の水は増し、大洪水が押し寄せ、アトラ・ハシース以外の人間たちは滅んでしまいました  人間を創った女神ニントゥ、神々の産婆マミ、そして出産の女神たちは 自らが創り出した人間たちが滅ぼされるのを見て、涙を流して嘆きました 彼女たちは、エンリルに対して非難の言葉を投げつけました しかし、エンリルはアトラ・ハシースたちが舟で助かったことを知り、怒って言うには 「アヌンナキが人間の滅亡を定めたにもかかわらず、助かった者があるというのか」 アヌが答えて言うには 「こんなことを、エンキ神以外の誰がするだろうか」 そして再び神々の会議が開かれ、人間を増やすことが決められました エンリルがエンキに言うには 「女神ニントゥを呼んで、人間を増やすことを告げなさい  出産の女神たちを呼んで、人間たちが増えるように取り計らうよう命じなさい」 このようにして、人間たちは再び地上に満ち溢れるようになりました
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